外国人の雇用における労務管理のポイントと法的義務とは
外国人労働者の受け入れを検討しているものの、どのようなポイントを押さえて労務管理を行うべきかわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、雇用主として押さえておきたい外国人雇用における労務管理のポイントや違反した場合はどうなるのかについて解説します。
就労ビザに関する知識を習得しておこう
外国人の雇用において、労務管理は重要なポイントです。とくに、就労ビザの種類について理解しておくことが必要です。そもそもビザとは在留資格のことであり、日本に在留してもよいという許可証のことを指します。
ただ、ひとえにビザといってもさまざまな種類があり、日本で働くことが許可される在留資格を「就労ビザ」と言います。
しかし、就労ビザの中にも種類があり、日本には合計19種類の就労ビザが存在します。例を挙げると医療ビザや芸術ビザ、特定技能ビザ、技能実習ビザ、研究ビザ、経営・管理ビザなどがあります。就労ビザの種類によって、在留期間や取得方法、必要書類、更新方法などが異なります。就労ビザは人に対して発行されているものなので、ビザの所有者本人が管理しなければならないのはもちろんですが、外国人雇用を行う場合は雇用主としてビザの期限や手続きについて理解し、更新などの必要な手続きを適宜管理する必要があります。
就労ビザで認められている範囲を超えた労働をしたり、就労資格のない外国人を働かせたりしたことが発覚した場合は、ビザの所有者にあたる外国人本人だけでなく、雇用主も罪に問われることがあるからです。外国人の採用は企業の多様性を高めることができますが、労務管理には専門的な知識が必要であることを理解し、事前に就労ビザに関する知識を習得して適切な採用と労務管理を実践しましょう。
賃金設定や労働時間の管理における留意点とは
外国人を雇用するにあたり、賃金設定や労働時間の管理についても問題になりがちです。すでに日本人の従業員が働いているはずなので、基本的には日本人の賃金体系をベースに外国人の賃金を決めなければなりません。
ただ、新規事業の立ち上げなどで外国人を雇用する場合、賃金設定をどのようにすべきか悩むケースもあるでしょう。その場合はすでに採用している日本人従業員の基本給をベースとし、職務手当などを新設して賃金を決める方法があります。日本人は安定した給与を求めがちですが、国によってはインセンティブの割合を大きくし、成果に対して給与が比例する形にした方が好まれるケースもあります。価値観や文化の違いを理解し、モチベーションの上がりやすい環境にするよう考えましょう。
また、労働時間に関する違反が起こりがちであることも留意しておくべきポイントです。「少なくとも毎週1回、4週間に4日以上の休日を与えているか」「各労働者の勤務実態を適切に把握し、記録しているか」といったチェックポイントがあるため、自社で遵守されているか確認する必要があります。
外国人労働者への各種手続き・支払いについて
外国人を雇用する際、一定の条件を満たすことで労災保険や社会保険に加入させる必要があります。社会保険の加入条件は「常時雇用されている従業員」「所定労働時間が週20時間を超えている」「月給8万8,000円(年収160万円)以上である」などの条件に当てはまる場合は、社会保険に加入させなければなりません。
また、所得税や住民税なども条件に当てはまると支払い義務が生じます。各種手続きや支払いについて、どのようなルールがあるのか確認し、法的義務を順守して雇用しましょう。
もし法に違反した場合どうなる?
雇用主として、法的義務を順守したうえで外国人雇用をすべきであることは当然です。しかし「知らずに雇っていた」ことで罪に問われることもあるので注意しなければなりません。なお、外国人の不法就労が発覚した場合は、本人だけでなく雇用主にも罰則があります。
たとえば「不法就労助長罪」や「営利目的在留資格等不正取得助長罪」といった罪に問われることがあるのです。どちらの罪も3年以下の懲役または300万円以下の罰金という厳しい罰則があり、企業に多大なるダメージを与えるでしょう。そのため、雇用前はもちろん、雇用期間中にも外国人労働者の就労ビザを定期的にチェックする、目視で確認するだけでなく、情報紹介サービスを使ってダブルチェックを行うことも大切です。
まとめ
外国人を雇用することで、企業の海外進出につながったり、新しい発想がプラスされて社内が活性化したりするメリットがありますが、日本人とは違う手続きや確認をしたうえで雇用しなければなりません。もし、確認を怠ったり、偽ったりして不法就労が発覚すれば、本人だけでなく雇用主も罪に問われることになります。外国人労働者が貴重な戦力になることは間違いないため、ポイントを押さえて雇用するようにしましょう。