人手不足で特定技能の資格を持つ外国人採用が増加している背景とは?
現在、外国人労働者が取得できる「特定技能」が注目されています。特定技能とは、国内の人手不足を補うために2019年に設けられた制度のことで、1号・2号に分類されます。
1号を取得している外国人労働者は多いものの、2号は高度な技能と長期就労が求められるため、決して数は多くありません。
そこで今回は、特定技能について情報をまとめてみました。2号を拡大するために検討されている提案についても紹介しています。
日本経済の低迷を防ぐ
近年、特定技能をもつ外国人を受け入れる企業が増えています。その大きな理由となっているのが「日本経済の低迷」です。
2019年に導入されたこの制度は、拡大することで企業の成長や期待を高め、日本の労働者にもよい影響を与えるでしょう。
外国人の国内雇用者は3%
国内の人手不足を緩和するために導入された「特定技能」ですが、現在働いている外国人の数は2022年10月末時点で約182万人となっています。同時期に調査された全体の雇用者数が6,081万人ですから、外国人だけで3%に達していることがわかります。
今後も外国人の採用が増えれば、労働生産性や実質賃金にもよい影響をもたらし、より日本人が働きやすくなるでしょう。
ただ一方で「日本人の雇用を奪うのでは?」という意見もあります。もちろん社会的問題を生じさせる可能性はゼロではありませんが、外国人の雇用者数が増えることで経済の低迷を防げるのであれば、結果的にはメリットの方が上回るといえるでしょう。
1号・2号に分類される
特定技能をもった外国人を増やすことで、日本の労働者にもよい影響を与えることがわかりました。
そもそも、特定技能とはどんな制度なのでしょうか?国内の人手不足を補うために導入されたとはいえ、この制度は「1号」「2号」に分類され、どちらを取得しているかで効果が変わってきます。
1号・2号の違いは、就労期間と技能レベルです。1号の場合、最長5年しか適用されないため、長期就労はできません。
一方で2号は高度な技能をもっているだけでなく、長期的に働くことが可能です。また、家族を日本へと呼び寄せ、共に暮らすこともできるので、どちらが魅力的かといえば当然2号でしょう。
さらに、2号のほうが日本経済の潜在力を高めやすく、日本人の生活改善にもつながるといわれています。
法改正によって受ける影響
以上のように、国内の人手不足を軽減するためには特定技能をもった外国人を増やすこと、とくに2号の資格をもった者を拡大する必要があることがわかりました。
ほかにも、外国人を雇用する企業や永住する外国人の増加も考えられます。一方で、都市部への移動が増えると、地方企業の人材受け入れが偏ってしまう可能性もあります。
外国人労働者が増えるのは、決してメリットばかりではないことも十分理解しておきましょう。
外国人労働者を増やすために必要なこと
国内に住んでいる外国人のうち、特定技能をもっているのは外国人労働者全体の8%を占めているといいます。そのうち2号を取得している外国人は10人に留まっており、ほとんどが1号になります。
日本経済にとって必要な外国人は、長期就労が可能な特定技能2号取得者です。ここでは、外国人労働者を増やすために求められていることを解説します。
長期就労を増やす
先ほども述べたように、長期就労が可能な「特定技能2号」を取得していることがもっとも重要になります。現在、日本で2号を取得している外国人はたった10人と少なく、建設業が主です。
とはいえ、2号は高度な技能をもっていることが条件になるため、1号ほど容易ではありません。それでも日本経済の低迷を防ぐためには、2号をもつ外国人が必要不可欠です。
そこで4月10日には「技能実習制度」の廃止が提案されました。これについては後述しますが、人権侵害の温床ともいわれていた制度が廃止されると、以前よりも技能実習生はスムーズに2号が取得しやすくなるでしょう。
問題点を解決する
現在抱えている技能実習と特定技能の問題を解決することも、長期就労の外国人を増やすためには欠かせません。
問題とは、技能実習の目的と制度内容が異なるケースです。実質的には同じ目的であっても、異なる制度として存在しているために手続きが複雑化しています。そこを改善しないことには、資格取得もむずかしいでしょう。
また技能実習での賃金未払いや人権侵害、キャリアパスを描きにくいなどの問題も挙げられます。せっかく特定技能を取得しても、企業から給料を支払ってもらえないと外国人労働者増えません。
そのうえ、不当な長時間労働や暴行暴言などのトラブルが多いとなると、長期就労を求める者が増えることはむずかしくなってしまいます。監理団体の監視やサポートが不十分なことも大きな問題点でしょう。
技能実習制度を廃止する
外国人労働者を増やすには、問題となっている「技能実習制度」を廃止する必要があります。現在はまだ提案段階ではありますが、廃止されることで賃金未払いや人権侵害といったトラブルを軽減できるほか、2号の取得もスムーズになると考えられます。
また廃止と同時に、代わりの制度も検討されています。この制度の目的は技能実習のような国際貢献ではなく、人材確保と人材教育になります。新しい制度が導入されれば、外国人でもキャリアパスが描きやすくなり、長期就労も増える可能性が高まるでしょう。
特定技能の対象にバス運転手も追加される
技能実習制度の廃止や新制度の導入など、特定技能の見直しが注目されているなかで「バス運転手」の追加も検討されています。現在、国内におけるバス運転手の数は、減少傾向にあります。
特定技能の対象に追加されれば、運転手不足を防ぐだけでなく、バスの減便や廃止も軽減できるでしょう。
バス運転手以外の運転手も対象
特定技能の対象は、バス運転手だけではりません。自動車運送業を行っている業者であれば、トラックやタクシーも対象になります。
23年度中には特定技能の対象として追加される可能性が高いので、人手不足が深刻化しているバス運転手も多少は働きやすくなるかもしれません。
ちなみに、24年4月からは運転手の時間外労働の上限が年960時間になります。
バス運転手は12分野に含まれる
特定技能が1号と2号に分類されるのはすでにご存知だと思いますが、バス運転手が追加された場合は「1号」に含まれます。1号には現在12分野が対象となっており、追加が検討されているバス運転手のほか、農業・飲食料製造業・外食業などが挙げられます。
たとえば農業なら、耕種農業全般・畜産農業全般を過去5年以内に6か月以上継続して働いた経験があること、もしくは技能実習生であることが条件になります。
飲食料製造業は、食料品製造業・清涼飲料製造業・菓子小売業・製氷業・加工食品小売業などが対象になり、技能実習生としては働けても特定技能では雇用されない場合があるので、注意が必要です。
バス運転手は2号ではないため高度な技能が必要な分野ではありませんが、それでも特定技能に追加されることで一定の労働者は確保できるでしょう。
まとめ
特定技能の資格をもつ外国人採用が増えている背景について紹介しました。背景のもっとも大きな原因は、日本経済の低迷にあることもわかったのではないでしょうか。
現段階では特定技能「1号」を取得している外国人労働者は多いものの、長期就労や高度な技能をもっている「2号」は少ないといわれています。今後日本で経済の潜在力を高めるには、2号の取得者が欠かせません。
そのためにはどんなことをやるべきなのか、またどんな新制度の導入や見直しが検討されているのか、今回の記事をぜひ参考にしてみてください。